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2.秘密

Posted by 葉丸李音 on 25.2009 365Themes 0 comments 0 trackback
「サジは志望校決めたの?」
 家に帰る道中、隣を歩くナツメが長い髪を靡かせて尋ねてくる。ナツメは頭がいいから、どこの大学にだって行けるだろう。だけど、それほどの脳もない俺は未だ目下、親と熾烈な口論を日々繰り返している。
「呆れた。もう7月になったっていうのに、決めてないの?大丈夫?」
「県内の大学には行きたいと思ってるけどなぁ」
「就職するにしたって、そろそろ決めないとマズいでしょ?昔からサジはギリギリまで悩んじゃうんだから、今回ばかりは早く決めなきゃダメだよ?」
 そういつもの様に俺を諭すナツメを眺めながらぼんやりと、こいつの近くにいれればどこでもいいんだけどな、なんて考えていた。幼稚園から高校まで一緒だったせいか、こいつが側からいなくなるということが余り現実的に考えることができず、大学にしたって俺が深く考えるまでも無くこいつと一緒になるんじゃないか……なんて甘いことを考えているのであった。
「それより、早く帰ろうよ。早くしないと図書館閉まっちゃうよ!」
 目の先にある信号が青から赤に変わろうと点滅している。ナツメが駆け出したので、俺がその後ろを精精追いかける。一度帰宅して着替えてから、ナツメと一緒に近所の市民図書館で閉館するまで受験勉強をする。4月に入ってからの日課をシミュレーションしながら前を走る幼馴染を眺めた。

――だから、その未来予想の手前で起こることを誰が想像できようか?

 ナツメが横断歩道を駆け足で渡ろうとし、あいつが横断歩道の真中ほどまで来た時。突然不快感をそそる、鉄の獣の咆哮がナツメに襲い掛かった。
「え?」
 ナツメは咆哮を聞くや否や立ち止まり、獣の方を向く。獣は減速することなく襲い掛かってくる。後ろから見てる俺はその光景が妙にゆっくりに感じる。ナツメは突然の事態に反応がついていけておらず、呆然として獣を見つめていた。
「危なねぇ!」
 無我夢中でナツメの背に手が届く所まで走り、全力で突き飛ばす。ナツメが未だ何が起こってるか分かっていないといういった感じの顔で、俺の顔を見つめながら向こう側の歩道路へと飛んでいく。俺は獣――車の方を見遣る。運転手は驚愕の表情で俺を見ていた。片手には携帯電話を持ち、もう一方の片手はハンドルを握っておらず、クラクションの方へ行っていた。
 異常なほど世界がゆっくりと動いていた。ナツメの方を見ると、まだナツメは宙に浮いていたし、車はまだ俺の所まで到達していなかった。車が急ハンドルで回避することができないことが判断できた。もちろん、車が止まることができないことも分かる。このままじゃ確実に俺にぶつかる。なら、えっと、どうしたらいいんだっけ?そうだ、後ろに飛べば気休め程度ではあるがショックを和らげられる。その後はどうしたらいい?どうしたらいい?どうしたらいい?
「サジぃッ!!」
 ナツメが俺の名前を叫んでいた。あぁ、ナツメやっと状況が分かったか。大丈夫、心配するなよ。お前は精精着地後に擦り傷する程度だろうからさ。あぁ、俺か。俺を心配してるのか。そうだな、今後ろに飛んだから、俺は運が良ければ助かるんじゃないかな。だから、心配するなよ。

――車が、俺に衝突した。

 ◆

「……ベタな表現だな」
 ふと、『目を覚ますと、見知らぬ天井が見えた』。そんな風に考えて、呟く。
 消毒液や色んな薬品の臭いもする。どうやら俺は病院にいるらしい。確か、ナツメと一緒に学校から帰ってる途中でえらくスピードを出した車に撥ねられたんだったか。
 病院にしてはやけに静かで、個室だろうかと辺りを見回そうとしたが、首が固定されていたので叶わず、目を動かそうとした瞬間、視界がナツメの顔で支配された。ナツメが涙も鼻水も唾も飛び散らかしながら口を開いた。
「サジッ!やっと目ぇ覚ましたぁ!サジ、6日も寝続けてたんだよ!」
 ……何かの冗談かと思った。
 少し目を閉じて、色々と頭の中で整理する。ナツメがこんなにパニックになってるんだ。昔からこいつがこうなった時は、俺が冷静にならなきゃダメだったじゃないか。
「……そんなに寝てたのか。心配かけてごめんな」
 ナツメの顔を改めて見る。見逃さない様に。
「ナツメが、元気なようで良かった」
「馬鹿ぁ!そんな、私のことより……ことより……ぅ、ぅ、う、あ、あ、あああ」
 最後は嗚咽のように感じたけど、もしかしたらもう一度「馬鹿」と言ったのかも知れない。
 泣き伏せてしまったナツメを見つめながら、謝った。
 何度も、謝った。

「それじゃ、担当の先生呼んでくるね」
 ナツメはそう言って視界から外れた。
 ナツメが見えなくなってから目だけを動かして辺りを見回す。どうやら個室らしい。うちもそんなに裕福ではないのに、奮発してくれたようだ。いや、人身事故だったから、あの運転手から搾り取ったのだろうか……。
 数分すると、白衣を着た医師が部屋に入ってきた。俺は下半身と首が固定されているので、それに気を配ってくれたのか、わざわざ視界が入る位置まで先生は来てくれた。
 顔を見つめる。髪の毛がやや後退していること以外は平均的な顔。だと、思う。
「やぁ。おはよう、佐藤君。私が担当医の林です。よろしくね。あの子は君の妹さんかい?素直で元気な良い子だね」
「……おはようございます。よろしくおねがいします。あいつは妹じゃないです」
 林先生は笑いながら挨拶してくれて、フレンドリーな印象が強かった。 おはようとは言われたが、正直今の時間は良く分からなかった。
「おや、そうなのか。ずっと付きっ切りだったからてっきり。さて、佐藤君。身体とか気分で何か気になることはないかい」
 表情を変えることなく、ベッドの脇に座るとカルテを片手に問診を始めた。
「……えっと……」


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1.ほおづえついて

Posted by 葉丸李音 on 23.2009 365Themes 0 comments 0 trackback
 夫がロボットを買ってきた。

 2年ほど前から勢力をつけてきたクリケット社の最新ロボット。メタリックな深い藍色。アイサイトカラーはライムグリーン。ステルス・ジェット機の様なフォルム。背丈は67インチ。

 アンドロイドなら買ってもいいと言ったのに、夫はロボットなんか買ってきた。
「ロボットなんて、お喋りするだけしか能が無いのに」
 家事はできないし、子守はできない。動力はオイルだからお金もかかる。全く。男ってヤツはどうしても誰も彼もロボットがお好きなのかしら。

 ロボットの名前はレイルという名前になった。理由は分からないが、夫の強い要望でそうなった。確か昔有名だったロボットアニメの主人公ロボットの名前、だった気がする。

 ◆


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